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紬裏五彩(ゆうりごさい)と絵付け▲
《風のグラフィティ・陶芸家広瀬さちよさんに聞く》より
聞き手・村松文代(IBC岩手放送ラジオ、1986年)
Contents |(1)釉裏五彩と絵付け|
≫(2)陶磁器の世界に入ったいきさつ| ≫(3)作品のこと,これからの目標|
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村松 |
広瀬さちよさんは、ご主人がろくろ、さちよさんが絵つけという、お二人で陶磁器を作っていらっしやるんですが、作品の特徴はどんなところですか? |
広瀬 |
まず、うちの特徴が紬裏五彩という、高温で焼く色絵の磁器です。「紬裏」というのは、中国で下絵の技術を言います。その技法の中でも、染付と紬裏紅、さび色というのは、中国陶磁でずっとやられていたんですが、わたし達はそれに緑と黄色を加えて五色を使った絵付けをしています。 |
村松 |
作品を拝見させていただきますと、色具合ですとか模様ですとか、とても繊細なんですけれども、絵付けについてはいかがですか? |
広瀬 |
今は日本の絵画、特に琳派に関心を持ってやっています。少し前までは中国陶磁に興味があって、染付中心の絵付けでした。それは骨描きといって、まず細い線で描いて、その中に色をさすというような絵付けですね。でも今は器面に部分的に釉薬をかけるとか、染付の吹き墨をするとか、そういうかたちで、面の一部を覆うような処理の仕方に移ってきました。
なぜそうなったかというと、日本の絵画の空間処理とか、着物の絵の構成が、おもしろく思えたからです。たとえば、霞がたなびいていると、その霞によって仕切られて、ぜんぜん違う絵が同じ画面に描かれる、あるいは、片身替わりの技法で、梅の花が描いてあって、枝の動きによって、あっと驚く画面分割をしています。そういう画面の動きが、わたしのやっている焼物の器にいかせないかと思っているからです。
日本的な表現方法について思うのですが、細かく何か説明するのじやなくて、たとえば、水仙の花一つとっても、抽象的、図案的なところでそのものを見せていく、そういうところがおもしろいですね。 |
村松 |
らしさというようなものですか?▲ |
広瀬 |
そうです。顔なんかものつぺりしてたってかまわない。そのものを醸しだす雰囲気、説明されてなくてもそれを解らせるようなもの、その辺じやないでしようか。
日本人は昔から、画面の中であまり息苦しく描き込んでいないもの、見る人自身によって感じさせるもの、中に入っていく余地があるもの、それが好きなんでしょうね。(続き→)▲ |