→広瀬典丈Webいけばな講座2 →1 デザイン演習1→基本について →技術 →自然調とは →古典花
|
いけばなを、対比やバランス、リズムといったデザイン理論的な構成法を中心に展開するとどうなるでしょうか。 (1)線・面・塊の対比
Photo1は、つるとカーネーションで交差を作り、Photo2は、四辺形の枠組みを、ゆりとにせこばん草で分割しています。▲ もう一ひねりした対比の作例がPhoto3です。くわずいもの葉の半面に窓を作り、そこからすすきの穂を覗かせるパタンを3つ反復して、面と線の対比を作り出しています。「覗き見」は、視線を導いて作品中心の密度を高める効果があります。 すすきや、葉の中を切ったくわずいもの水揚げを心配されるかも知れません。あらかじめしっかり水揚げしておけば、大丈夫です。▲
|
←Photo5 こでまり ↑Photo6 アガパンサス ←Photo4 クルクマ |
対比をテーマにした一種いけは、花材の魅力を引き出すのに、うってつけの演習です。
同じ花材の花・葉・枝・茎の部分を分けるのです。▲
Photo4は、クルクマの花と葉を左右に分けています。2つは、一見同形には見えないかも知れませんが、上下の大きさを逆にして、点対称を少し意識しています。色面分割のような感じもしますね。▲
Photo5は、こでまりの花葉のマッスで枝部分を斜め上下に挟むように対比させました。真ん中に空間があることで、全体が外に広がらず、枠づけされたようになります。この全体の枠付けが、対比の土俵を支えています。
Photo6も、アガパンサスの花と葉で方向性を変えたマスの対比です。▲
←Photo7 あかめがしわ、あじさい、つつじ ↑Photo8 いたどり、せいたかあわだち草 →Photo9 すぎ、つばき |
同形・同質のもので色が違うというようなものは、色彩でコントラストが際だってきます。
例えばPhoto7は、同じ広葉で形も少し似ている、赤芽がしわと紫陽花の葉を上下に重ねて並べたものです。赤芽のピンクと紫陽花の葉の緑が際立った対比を作ります。
▲
しかしそれだけではありません。それぞれの枝に対する葉付きや葉の質感の微妙な違いまで浮き上がりますから、逆に、Photo8のような、それぞれが似ているようでいて少し異質な花を、マッスで一繋ぎに左右に展開すると、違いが強調される効果もあります。
淡黄緑のかさかさした小さな花が集まるイタドリと、小さくても鮮やかでしっとりした黄緑の菊を集めたセイタカアワダチ草。同じ頃野に咲く対照的な花の、それぞれの持ち味を並べて見せるような演出もあります。
Photo7・8も質感の対比になっていますが、色がもっと似たものでは、質感対比がさらに現わになります。Photo9は、杉の葉、椿の葉という異なる木の葉のマッスを上下に構成しています。花器も含めた形の類似から、その三つの対比を見る人もいるでしょう。▲
↑Photo10 セローム、モンステラ | ↑Photo11 すぎ、エリカ →Photo12 すいせん |
よく似た形のものを並べると、逆に形の違いが強調されます。
▲
単純ですが、Photo10は、同じ里芋の仲間のセロームとモンステラを方向を変えて上下に置いただけです。
Photo11は、杉とエリカの花葉のマッスを刈り込んで、2つの形を作っています。ここでの杉とエリカは、対比の要素ではなく、色分けされた花器との対応で使われています。むしろ、花器を含めた左右の形と向きの呼応が対比なのです。
▲
Photo12は、真っ直ぐ延ばした水仙の集合した花茎と、放射状2方向に屈曲した水仙の葉という、形と方向性の違いで対比を作っています。▲
←Photo13 いちじくの葉 ↑Photo14 たんぽぽ |
質感対比の延長で、同じ花材の裏表や花と実・種などの対比も面白い表現になります。Photo13は、いちじくの葉を破き、裏表を交互に重ねて、前後に並べています。葉の縁を破くのは、葉が持っている自然の動きを殺して、裏表の色や葉脈の表情の違いを引き出すためです。
同一(近似)物の対比は必ずしも一種いけに限りません。対比の場は、同一・類似物の場であればこそ対照されますから、意外なところに類似性や相違を見つけだし、出会いの場を作り出すことが、「対比による構成」のテーマと言えるでしょう。
Photo14は、左右でモンステラの表裏を分けたのに加えて、たんぽぽの花と綿毛で分割を作っています。▲